売上が下がった。広告を増やすべきか。セールを行うべきか。商品ページを直すべきか。

打ち手を急ぐ前に、売上のどこが変わったかを確認します。原因が違えば、有効な施策は逆になることもあります。

EC売上分析の第一歩は、詳細な分析ツールではありません。売上を構成要素へ分け、どこから想定とずれたかを同じ順番で確認することです。

売上の基本式

EC売上は、まず次のように分けられます。

売上 = セッション数 × CVR × 客単価
  • セッション数:購入機会となる訪問の量
  • CVR:訪問が注文へ変わる割合
  • 客単価:一注文あたりの売上

仮に売上が10%下がっていても、原因は一つではありません。

  • 流入が減り、CVRと客単価は維持
  • 流入は増えたが、CVRが低下
  • 注文数は維持したが、客単価が低下
  • 各要素が少しずつ低下

合計売上だけを見て広告を増やすと、CVR低下が原因の場合は、購入されにくい状態へさらに流入を送ることになります。

式は単純ですが、打ち手の順序を守るための地図になります。

手順1:数字が正しいか確認する

売上低下を分析する前に、集計条件を確認します。

  • 速報値と確定値を混ぜていないか
  • 注文日と売上計上日が一致しているか
  • キャンセル・返品・税・送料をどう扱うか
  • タイムゾーンと比較期間が同じか
  • 計測タグ、受注連携、モールデータに欠損がないか

ECプラットフォーム、アクセス解析、広告管理画面で値が違うことはあります。どれが正しいかを一つに決めるより、売上は受注DB、流入はアクセス解析など、判断ごとの正本を定めます。

手順2:比較する期間を揃える

前日比だけでは、曜日や販促の影響を受けます。少なくとも次を使い分けます。

  • 前週同曜日:直近の運用変化
  • 直近4週平均:短期の傾向
  • 前年同時期:季節性
  • 計画比:事業目標との差
  • 施策前後:自社変更の影響候補

前年に大型キャンペーンがあったなら、単純比較はできません。比較期間に、セール、価格変更、在庫切れ、広告変更、サイト改修の印を付けます。

手順3:流入・CVR・客単価へ分ける

三つを同時に確認し、最も大きく変化した要素を特定します。

変化

最初に確認すること

打ち手候補

流入減、CVR維持

チャネル、掲載、検索需要、広告配信

集客回復、配分変更

流入増、CVR低下

流入構成、訴求、デバイス、新規比率

対象・導線の整合

CVR低下

在庫、価格、配送、商品ページ、障害

原因箇所の修正

客単価低下

商品構成、値引き、セット、送料条件

商品提案・販促設計

「CVRが低いから商品ページを直す」と即断しません。流入チャネルの構成が変わると、全体CVRも変わります。チャネル別、デバイス別、新規既存別へ分けます。

手順4:新規と既存を分ける

売上全体が維持されていても、新規顧客が減り、既存顧客の購入で補っている場合があります。逆に新規獲得は増えても、二回目購入が減っていることもあります。

売上 = 新規顧客売上 + 既存顧客売上
既存顧客売上 ≒ 顧客数 × 購入頻度 × 客単価

確認する項目は次の通りです。

  • 新規顧客数と獲得単価
  • 初回購入商品の構成
  • 二回目購入率と購入までの日数
  • 既存顧客の購入頻度
  • 休眠・離反の増減

新規と既存では、施策が違います。新規不足なら認知・集客・初回購入障壁を見ます。既存低下なら、商品体験、消費周期、在庫、CRM、代替商品を確認します。

手順5:商品とチャネルの構成を分ける

平均値は、構成変化を隠します。

売上上位商品が在庫切れになり、低単価商品へ注文が移れば、注文数が維持されても客単価は下がります。広告流入のCVRが変わらなくても、自然検索流入が減れば全体売上は下がります。

商品別には次を見ます。

  • 売上、注文数、粗利
  • 閲覧、カート投入、購入
  • 在庫切れ・欠品日数
  • 値引きと返品
  • 新規獲得商品か、継続商品か

チャネル別には、流入量とCVRだけでなく、顧客獲得費、初回商品、継続、粗利まで見ます。短期ROASが高いチャネルでも、値引き依存や既存顧客への再配信が中心なら、増分は小さい可能性があります。

手順6:売上から粗利・在庫・継続へ進む

売上が増えても、利益や将来売上が損なわれることがあります。

概算粗利 = 売上 - 原価 - 値引き - 変動する販売費

実際の管理会計定義に合わせ、広告費、送料、決済手数料、返品などをどこまで含めるかを決めます。

また、在庫を無視すると、売れている商品へ広告を増やした結果、欠品し、既存顧客の購入機会を失うことがあります。売上分析はサイト内で完結しません。商品、在庫、物流、顧客対応までつなげます。

よくある変化パターン

流入は増えたが売上が伸びない

チャネル別CVR、ランディングページ、検索語・訴求、新規比率を確認します。意図の異なる訪問が増えた可能性があります。

CVRは上がったが新規顧客が減った

既存顧客比率や指名流入が増え、全体CVRが上がっている可能性があります。獲得施策を止める根拠にはなりません。

売上は増えたが粗利が下がった

値引き、広告費、低粗利商品の構成、送料、返品を確認します。売上最大化から利益・顧客価値へ目標を修正します。

新規は増えたが数か月後に伸びない

初回商品の体験、二回目購入までの導線、消費周期、レビュー、問い合わせ、CRMを確認します。獲得した顧客が継続する設計が必要です。

週次と月次で見る順番

週次では、計測異常、流入、CVR、在庫、施策変更など、すぐ戻せるものを見ます。月次では、新規・既存、商品構成、粗利、継続、チャネル配分を見ます。

週次会議の基本順は次です。

  1. 売上と粗利の差
  2. 流入・CVR・客単価の変化
  3. 最も動いた商品・チャネル・顧客群
  4. 直前の施策・価格・在庫変更
  5. 次週に変えること

分析項目を増やすのではなく、異常が見つかった枝だけを深掘りします。

まとめ:売上が下がったら、施策名ではなく式へ戻る

EC売上が停滞すると、広告、セール、サイト改修など、分かりやすい施策へ飛びつきたくなります。

その前に、売上を流入、CVR、客単価へ分ける。次に新規・既存、商品、チャネル、粗利、在庫へ進む。どこから変わったかが分かれば、施策候補は狭まります。

分析の目的は、説明を精密にすることではありません。次に変える場所を選び、結果をもう一度確認することです。

Ansatzは、ECの売上構造、顧客、商品、施策データをつなぎ、週次の改善判断まで支援します。マーケティングアナリティクス支援をご覧ください。

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