聞きたいことをすべて並べたアンケートは、回答が集まっても判断に使えないことがあります。

「満足していますか」「改善してほしい点はありますか」。答えやすそうに見えても、何を変えるための質問か、回答をどう比較するかが決まっていなければ、結果は感想の一覧になります。

アンケート設問は、質問文を書く前に、調査後の意思決定、仮説、分析単位、必要な精度を決めるところから始めます。

設問より先に決める5つのこと

1. 調査後に何を決めるか

商品改善、訴求、顧客分類、価格、利用支援など、結果を受けて変えられる判断を一つ置きます。

2. 対象者

購入者、未購入者、利用中、離反などを分けます。経験していない人へ詳細な利用満足を聞かないようにします。

3. 仮説

何が分かれば判断が変わるかを書きます。仮説がなくても探索調査はできますが、探索と検証を同じ設問で曖昧に混ぜません。

4. 分析単位

全体平均だけでなく、商品、利用期間、購入回数、流入など、どの区分で比較するかを決めます。

5. 必要な回答形式

単一選択、複数選択、数値、尺度、自由回答を、分析方法に合わせて選びます。

設問を作る7つの原則

一問で一つだけ聞く

「価格と品質に満足していますか」は二つの論点を含みます。価格と品質を分けます。

具体的な期間を置く

「普段」「最近」ではなく、「直近30日」「最後に購入したとき」のように記憶範囲を示します。

回答者が知っていることだけ聞く

「なぜ広告を見て購入したのですか」と原因を直接聞いても、本人が正確に説明できるとは限りません。見た情報、比較した点、迷った場面など、経験を聞きます。

誘導する前置きを避ける

「環境に優しい当社商品について」のような評価を含む表現を避けます。必要な説明は中立的にします。

選択肢を重複させない

年齢の「20〜30歳」「30〜40歳」のように境界を重ねません。

該当なし・分からないを用意する

無理に選ばせると、存在しない意見を作ります。ただし「どちらでもない」と「分からない」は意味が違います。

回答順による影響を考える

総合満足を聞く前に詳細項目を並べると、回答が直前の論点に引かれる場合があります。重要な評価は順序を検討します。

質問形式の使い分け

形式

向いている用途

注意

単一選択

最も近い一つを分類

選択肢の網羅と重複

複数選択

経験・理由の複数把握

選択数が人により違う

5〜7段階尺度

程度の比較

両端・中間の意味を明示

数値入力

回数、金額、時間

回答可能な範囲を設定

自由回答

未知の表現や理由探索

コーディング工数が必要

自由回答を増やすほど深くなるとは限りません。分析方法と工数を先に決めます。

設問設計シート

判断

仮説

対象

聞く経験

質問形式

分析区分

回答後の行動

初回案内を改善する

利用開始で迷う

購入30日以内

最初に止まった場面

単一+自由回答

商品別

案内順を修正

各設問について「この回答で何を変えるか」が書けなければ、削除候補です。

選択肢を作る手順

  1. 既存の問い合わせ、レビュー、インタビューから候補を集める
  2. 意味が近いものをまとめる
  3. 重複と抜けを確認する
  4. 回答者に理解できる表現へ変える
  5. その他・該当なしの扱いを決める
  6. 事前テストで選びにくい箇所を直す

社内用語や商品分類を、そのまま回答者へ押し付けないようにします。

回答者保護とデータ管理を配信前に確認する

設問が分かりやすくても、回答者が目的や扱いを理解できなければ適切な調査とはいえません。少なくとも次を確認します。

  • 調査目的と利用範囲を回答前に示す
  • 参加は任意とし、スキップ・中断・回答しない選択を用意する
  • 判断に不要な個人情報を取得しない
  • 録音、行動ログ、外部データとの結合は対象と同意を明示する
  • 閲覧権限、保存期間、削除方法、外部委託先を決める
  • 未成年者や要配慮情報を扱う場合は、法務・個人情報の担当者へ追加確認する
  • 公表時は少人数の区分や自由回答から個人が推測されないようにする

調査全体の手法と運用は、市場調査の方法も参照してください。

配信前の認知インタビュー

少人数でも、対象に近い人へ画面を見せ、考えながら答えてもらいます。

  • 質問をどう理解したか
  • どの経験を思い出したか
  • 選択肢で迷った理由
  • 答えたくない・分からない箇所
  • 回答にかかった時間

誤字確認だけでは、意味のずれを発見できません。

よくある失敗

  • 一つの調査で認知、満足、価格、商品開発を全部聞く
  • 理由を聞きすぎて、回答者の後付け説明を事実とする
  • 選択肢を社内の仮説だけで作る
  • 回答必須を増やし、適当な回答を生む
  • 回答数だけを重視し、対象者の条件を確認しない
  • 集計してから、比較に必要な属性がないと気づく

まとめ:設問は、回答後の判断から逆算する

アンケート設問は、調査後の判断、対象者、仮説、分析単位、回答形式を決めてから書きます。

既存の設問を見直すなら、各質問の横に「この回答で何を変えるか」を書いてください。空欄になる質問は、目的を再定義するか削除します。

調査設計から分析まで相談したい場合は、Kizashi インサイトまたはお問い合わせをご覧ください。

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